研修医支援

時代に求められ、TVドラマ化もされた、今後ますます重要度が増していく【総合診療科】

なぜ総合診療科は注目されているのか?

総合診療科は、患者の全体を診る診療科です。
内科、小児科、産婦人科、外科、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、精神科など、多岐にわたる診療科の知識が求められ、横断的にアプローチすることによって幅広く診療を進めることが特色となります。

臓器別に細分化された診療体制がもたらす診療の断絶や、医療の地域格差、複数の病気をかかえる高齢患者の増加など、旧来での医療体制では対応が難しいケースが増えてきたことが問題となり、横断的に診る力を備えた医師の必要性が非常に高まったことで、2018年に19番目の基本領域専門医として制度化されました。

社会課題の解決にとても期待をされている診療科であり、患者との接点も増え、距離が近くなることから、人から頼りにされる診療科となります。

医師から見た総合診療科の魅力とは

① 横断的な視点が養われる

臓器別に診る専門診療科と比べて、総合診療科はあえて「限定しない」強みを持ちます。
「複数の診療科にかかっている患者の全体像を統合する」など、横断的に判断をしながら患者の問題をとらえていく必要があるので、視野が広がります。

② 人間力が育てられる

身体的な診察や診断能力だけでなく、患者の生活背景・心理・家族・地域との関係まで含めて支援するため、「病気」ではなく「人」を診る力が求められます。傾聴力、共感力、チームとの調整力など、臨床以外のスキルも自然と磨かれますので、自ずと医師としての人間力が培われていきます。

③ 自由で多様なキャリアが広がる

病院勤務にとどまらず、診療所・在宅医療・地域包括ケア・災害医療・教育・行政など、多様な場所で活躍でき、一つの専門に縛られない分、自分の興味やライフステージに合わせて柔軟にキャリアを構築できます。 活躍フィールドは多岐にわたる、このような自由度の高さが大きな魅力です。

総合診療科の大変なところ

時代に求められ、多様な魅力がある一方で、全体を診る以上は一定の覚悟や自律性も求められます。

① 多様なだけに「自分」を築く必要がある

“広く診る”ことに長けていますが、その分「何が自分の強みか」を自分自身で明確にしていく必要があります。
例えば、在宅医療に強みを持つのか、地域連携の構築か、初期診療におけるトリアージか――。他の専門医と比べて、職能の軸を自ら育てる意識が必要です。

② 高い診断力・判断力が求められる

初診の患者や多疾患併存例、症状が曖昧なケースなど、診断が難しい場面に日常的に直面します。情報が限られた中でも、「次に何をすべきか」を判断する能力が求められ、瞬時の意思決定と幅広い知識の統合力が問われます。

③ 常に知識のアップデートが求められる

診る領域が幅広いため、医学的知識のアップデートは欠かせません。特定の分野に集中できる他科とは異なり、学び続ける姿勢が診療の質に直結する点は、やりがいでもあり、難しさでもあります。

総合診療科の豊かな将来性と高い需要

厚生労働省の地域医療構想や、在宅医療の推進方針などを見ても、総合診療医に対するニーズは今後も確実に高まっていくと予測されています。

総合診療専門研修プログラム数が
4年間で約1.4倍に増加

2020年から2024年の4年間で大きく増加し、医療業界での需要と期待が見てとれます。

■ 総合診療科専攻医 採用推移(2020~2024年度)

(出典:日本専門医機構)

2040年には団塊ジュニア世代が高齢者に

2040年には団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者となるため、人口に対する高齢者の割合が2040年には約35%になると言われ、2020年の約28.6%から7%近く増える予測です。そのため、総合診療科が必要とされる、慢性疾患を複数もつ患者の増加が予想されています。

■ 人口構造の変化推移

(出典:国立社会保障・人口問題研究所「年齢(4区分)別人口の推移と将来推計」「総数、年齢4区分別総人口および年齢構造係数」※ 2015年までは国勢調査の実績値、2016年以降は推計値。 /厚生労働省 令和4年度 厚生労働省委託事業 在宅医療関連講師人材養成事業 研修会 総論①政策からみた在宅医療の現状について

地域医療、在宅医療、総合病院の初期診療、教育・指導など、“診る力”と“つなぐ力”がある医師の役割は、今後ますます大きくなるでしょう。

最後に|「自分らしい医師像」を
描ける一方で、覚悟も求められる

総合診療科専門医は、専門医制度のなかではまだ新しく、確立途上の側面もあります。ですが、その分、自由度の高いキャリア形成ができる可能性を持つ領域でもあります。

  • 患者の「診療科にとらわれない悩み」に応える力を身につけたい人。
  • 一つの専門に縛られず、自分のフィールドを広げたい人。

そんなあなたにとって、総合診療という道は、一考の価値があるかもしれません。

ただし、診療の幅広さや患者の多様な背景に向き合う中で、決して楽な道ではないという現実もあります。それでもなお、医療の入口から出口まで、「人をまるごと診る」。 それが、総合診療科専門医という新しい専門性です。



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