医師キャリアの選び方

在宅医療と育児を両立しながら複数の専門医資格取得へと挑戦する医師

患者一人ひとりと深く関わる在宅医療の現場で、育児と両立しながら専門医資格の複数取得に取り組む医師にお話を伺いました。 日々の診療にやりがいを見出しながら、自分らしい働き方とキャリア形成を実現するその姿から、医師として成長し続けるためのヒントがあります。

医師プロフィール 2019年 医師免許取得/内科専門医資格を保有/新型コロナ禍で「その人らしい最期の場所」について考えるようになり、在宅医療に強い関心を持つ/専門研修終了後、訪問診療所に勤務し、患者の人生に深く寄り添う「あたたかい自宅看取り」を多数経験/後期研修中に出産を経験し、短期間で職場復帰/現在は在宅専門医、内科サブスペシャリティ、産業医資格の取得を目指し、やりがいと楽しさを軸にキャリアを構築中


在宅医療について、どこに魅力を感じたか教えてください

研修医期間中に新型コロナウイルス感染症が流行し、医療現場も大きく変化しました。感染隔離のため、家族と面会できずに病棟でお看取りとなる方も多くいました。同時期、自身の祖父も心不全の増悪で施設から急性期病院に入院となり、亡くなりました。

当たり前のように病棟で「死」と向き合う中、「その人らしく過ごせる最期の場所」について考える時間が増え、在宅医療の現場に関わりたいと強く思うようになりました。専門研修が終了し、新しいことに挑戦するタイミングで訪問診療所への勤務を決めました。

入職前と入職後のイメージギャップはありましたか?

勤務前は主に家族から心配の声もありました。在宅医療では、積極的な治療を行わない、予後も限られた患者の割合が多くなるため、医師として精神的に耐えられるのかということでした。

また、大病院での勤務の方が専門キャリアを積む機会に恵まれ、就職先としても安定しているのではないかという懸念の声も聞かれました。実際、勤務後は、患者の人生に深く寄り添い触れる、「あたたかい自宅看取り」を多数経験したことで、「死」についてのネガティブな印象が変化しました。

キャリアについては、勤務先の診療所の規模感や方針に大きく左右されると思いますが、私の場合は幅が広がったように感じます。入職当初は考えていなかった在宅専門医に関しても、診療所全体の積極的なサポートによって取得を考えております。

現在のワークライフバランスについて教えてください

常勤先の訪問診療所では、子育ての関係で時短勤務の平日週4日、残りの半日は外来で内科診療スキルをブラッシュアップするために、研修医時代からお世話になっている病院で外勤させて頂いております。

子育て世代の先生、時短勤務等で調整されている先生方が多くいらっしゃるため、常勤先では引け目等を感じることなく自身の仕事に打ち込むことができています。時間外の緊急対応が入らない勤務体系になって子供との時間も集中して過ごすことができるようになりました。

先生がいま考えている今後のキャリアパスを教えてください

研修医終了後からキャリアチェンジを決めた際は、自身がどこまで訪問診療を継続するか未定でした。一方、1年勤務を継続した今、在宅専門医にチャレンジするという目標ができました。

また、昨年は内科専門医を取得したため、現在継続している病院での外来勤務を糧に、その後のサブスペシャリティ取得についても、考えていきたいと思っています。土日がフリーの勤務体系になったことから、産業医講習会を受講する機会も得られ、現在は産業医資格を申請中です。

初期研修での失敗談と、それをどう活かしているか教えてください

初期研修医時代は医師としても未熟である一方、社会人としてコミュニティに慣れていくことも大変だった記憶があります。

学生時代は先生であった存在が、上司という立場になり、緊張してなかなか質問ができなかった場面も多くあったと記憶しています。自分がわからないことを伝えて、的確に助言を求めることも社会においては必要です。

医師という立場上、他職種からも「指示」を求められることが多いですが、自身の力を過信しすぎず、上司はじめ、他職種にも一人の社会人として相談できるような謙虚な姿勢は、今でも大切だと思っています。

研修医の出産・育児経験と、キャリア中断・復帰の工夫や影響を教えてください

後期研修中に出産を経験したため、専門研修を延期しないように休職期間を設定し、短期間で職場復帰しました。メリットとしては、専門研修中に培ったスキルを忘れることなく、復帰後も活用できたことだと思います。

また、同期と同じタイミングで研修を終了し、専門医取得も可能となったことは非常に助かりました。休職期間中は専門医試験についての勉強やオンラインで学会参加などを中心に行なっていた記憶があります。ただ、育休期間に関しては各々の家庭の事情やお子さんの体調等もあるので、一概には決められないと思います。

実際、復帰して子供を保育園に預けるようになってからの方が、子供が感染症に罹患したり、熱を出したり、生活はなかなか安定しませんでした。職場復帰後、しばらく家庭のリズムが安定しないことは当たり前ですので、そこをどう過ごすか、パートナーや家族と分担することも考えていくことが重要だと思っています。

複数の専門医資格を並行取得する中で、大切にしている考え方やモチベーションは何ですか?

上記にもありますように、在宅専門医、内科サブスペシャリティ、産業医など様々な専門資格に挑戦している現状です。

もちろん、出産を契機に自身のライフワークバランスを考えることは増えましたが、今「楽しい」と思えることを大切に勤務していくうちに、資格取得に関しても前向きに考えていくようになりました。

誰かから指示されていること、やりたくないこと、興味のないことより、やりがいを感じること、「楽しい」と思えることを、その時々の自分の生活のあった方法にあてはめていくことが大切だと思っています。

後進の医師へアドバイスをお願いします

研修期間中に出産、子育てを経験したり、研修終了後にキャリアチェンジをしたり、資格取得に挑戦したりしていますが、後悔したことはありませんでした。ライフワークバランスを気にされる先生方も多くいらっしゃると思いますが、こちらに関しては状況に応じて結果としてついてくることもありますので、先を案じすぎる必要もないかと思います。特に、初期研修でこれから専門科を決めていく先生方には、この診療科で働いた時にワクワクするだろうなと思う前向きな気持ちや興味も大切にして欲しいと思います。

医師経歴

  • 2019年 関東某大学医学部 卒業
  • 2019~2021年 都内某人気市中病院A 初期研修プログラム
  • 2021~2024年 都内某人気市中病院A 内科専門研修プログラム
  • 2024年~ 都内某診療所A 内科常勤医、都内某病院X 血液内科非常勤医

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